テーマ 96 聞き上手、話し上手な管理職者となる
■聞き上手な管理職者となる
1957年の古い論文ですが、
アメリカのラルフG.ニコルス氏、レナルドA.スティブンス氏の
『「聞き上手」になる方法』という論文の中に
下記のような記述があります。
聞くということに関して、
非常に参考になるかと思いますのでご紹介させて頂きます。
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アメリカ人の平均的な話すスピード1分間に125語
人間の脳細胞130億個では、遅く感じられる。
そのため話を聞くとき人は高速で思考を続けることになる。
つまり人は一つの話を聞きながらも、
別の思考にあてる余裕の時間を持つことができる。
この余裕の思考時間を有効に使うか、
あるいは間違った使い方をするかによって、
話された言葉にどれだけうまく集中できるかが決まってくる。
上手な聞き手は、定期的に四つの思考活動を行っている。
人の話を聞くとき、その話す速度に比べて考える速度が速いので、
下記の四つの思考作業を遂行させる時間はたっぷりある。
1.聞き手は話し手の先を考える。
趣旨がなんであるか(どこに向かっているか)、
いまの話の内容から導き出される結論は何か、
を予想しようとする。
2.聞き手は、話し手が論点を裏づけるために
挙げた例証を検証する。
例証は妥当だろうか、これは完璧な論拠となるのだろうか、
と聞き手は自問自答する。
3.聞き手は、その時点までに話された論点を定期的に反芻し、
論点を頭の中で整理する。
4.聞き手は、必ずしも話された言葉にすべてが
こめられているとはかぎらないと考え、
話し手の真意を探ろうとする。
話された言葉に別の意味を追加するものが
あるかどうかを見極めようと、
聞き手は、相手の表情や身振り手振り、
声の調子など非言語的な表現手段に注意をはらう。
話し手は、この話題のある部分を
故意に避けているのではないか、
だとすれば、その理由は何か、と自問する。
また、感情が聴覚のフィルター機能を果たす。
偏見や先入観、信念、劣等感などに抵触するような
何かを耳にした時、人の脳は、敏感に反応し、
冷静なリスリング機能が発揮されなくなる。
感情のフィルターに対処する方法
1.評価を保留する
話が終わるまでは、批評や判断はひかえる。
話が終わってから、話し手の意図を吟味し、評価する。
ほとんどの人にとって耐えられないほどの
強い自制心が必要となる。
2.否定的な例証を探す
人は自分が間違っていることを証明する材料など、
決して探そうとしないものである。
このため、自分の正しさを証明する
考えを探求するように、間違っていると
証明する考えを探求する気持ちがあれば、
他人の言おうとしていることを
聞き逃す危険性も低くなる。
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人の話をよく聞くことの重要性は、だれもが唱えますが、
上記の論文は聞くということに関して
科学的に分かりやすく説明されており
非常に参考になるかと思います。
■人間的な配慮を踏まえた上で、目標達成のため、
付加価値を増すためのコミュニケーションをとる
例えば、「おはようございます。お疲れ様でございます。」
といったあいさつは、業務を遂行する上では、
何も意味はないと思われるかもしれません。
しかし、感情を持ち、血の通った、
生身の人間が集団を形成している職場では、
人間が基本的に持つ警戒心を解き、チームワークよく、
生産性の高い仕事を行っていくためには、
あいさつは、非常に重要な役割を果たしているのは事実です。
人間は、好むと好まざるとに関わらず、
無神経な態度やことば使いには、不快感を感じます。
職場の中で、
上司や部下の方とコミュニケーションをとるときは、
このような人間的な側面を踏まえて、
論文にあるような科学的な面も考える必要があります。
職場では、仕事の目標達成のための会話がほとんどですので、
実務的には、上司や部下の方の話しを聞くときには、
「仕事に新しい付加価値を付けることはできないか」、
「新しいビジネスチャンスはないか」
を常に考えながら聞くことが重要となります。
■能動的に聴き、受動的に話す
職場の中で上司や部下の方と
コミュニケーションをとる時は、
「能動的に聴く」、「受動的に話す」
というのが実務的と思います。
聴くという字は、14の心で耳を傾けると書きます。
上司や部下の方の話は、受け身ではなく、
能動的な姿勢で聴き、
上司や部下の方が話している話の意図、
真意を理解するようにします。
また、上司が部下の方に話しをする時は、
自分の話が、相手に伝わっているか、
理解してもらえているかを受け止めながら、
確認しながら話す、受動的な話し方が効果的です。
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